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【イベントレポート】HIKE & SWAP 2023 〜「循環」への転換〜

5月13日(土)と14日(日)の2日間にわたって六甲山上で開催したイベント「HIKE&SWAP」の模様をレポートします!

ROKKONOMADなどを会場として六甲山上で春に行っているイベント「HIKE&SWAP」、今回で第3回の開催となりました。六甲山の森の中で、食事したり、トークを聞いたり、ハイキングしたり、物々交換したり、山上の不動産物件を見学したり、そんなことができるイベントです。

2023年のテーマは「循環」です。日本の経済は低成長時代に入ったと言われます。また輸入原材料を中心に物価の高騰を肌で感じる日々です。こうした状況が今後加速していったとしたら? 食料を自分たちでつくって供給できるようにしようとか、モノは長く使ったり再利用したりしようとか、私たちの生活のあり方自体を改めていかざるを得ないかもしれません。ROKKONOMADでは昨年、オランダにおけるサーキュラー・エコノミー(循環型経済)の先進的な事例に触れたという経緯もあり、改めて私たちが暮らしの中で取り入れていける「循環」のあり方について意識していこうと思っています。

2023年「HIKE&SWAP」より、「成長とは何か。成長するべきか」についてのトーク。

山の散歩と物件ツアー

六甲山上物件ツアーの様子。こちらは元保養所だった建物。

初日の午前中には、参加者の皆さんと山歩きをしつつ、山上の物件を巡るツアーを行いました。元山荘だった建物など、現在は活用されず空いたままとなっている建物が少なくなく、そうした物件を数件巡りました。なお、ROKKONOMADのウェブサイトでは、現在使用者を募集中の山上の物件の情報を常時掲載しています。
六甲山上の物件情報はこちら

街と山のつながりを意識する

六甲山上に開設された(株)紅中のサテライトオフィス。

「社員たちに、自分たちの扱っている材木のことを、森との関係から考えるようになって欲しい」。大手材木商社の株式会社紅中は、そのような考え方のもと、昨年に六甲山上で物件を取得、サテライトオフィスを作りました。今回はそのお披露目も兼ね、紅中の中村社長、六甲山で育った木の活用を推進している「SHARE WOODS」山崎正夫さん、ROKKONOMADの代表を務める小泉寛明が登壇してトークを行いました。

今後、この建物はシェアオフィス機能も持たせ、外部の人も利用できるかたちにしていくとのこと。

「この場所から、皆さんとも森の現状について、また現在の課題感について共有していけたら良いと思っています」(中村社長)

「もともと六甲山には林業という業態はなかったわけですが、この山の木をどう地域の中で有効に使えるようにするか、その仕組みを整備する活動をしています。自分たちの暮らしている街に山があっても、その場所の木を使うことが出来ると街の人たちは思っていない。山にたくさん木はあるのに、その価値は共有されていない。だから意識が変わるように、山と街の接点の部分を少しでも多くしていきたい」(山崎さん)

ローカルの飲食事業者が出店した山上マーケット。山の緑のもと、ランチを楽しんだ。
神戸産の野菜を使ったベトナム風サンドイッチ「バインミー」。

リペアカフェ

今年は、「リペアカフェ」というプログラムも新たに加わりました。神戸市北区にあるオーダー家具の店「NaLgreen(ナルグリーン)」の佐々木拓也さんを招き、家具のリペアについて講義・実演してもらいました。

「輸入材の価格が高騰していますし、新品の家具製造コストは上がってきています。私たち家具職人の立場から言っても、長く使い続けることやリペアしながら使うことの重要性は生活の中で今後増していくんじゃないかという気はしています」

家具のリペアについて説明をする「NalGreen」佐々木拓也さん。

「では、リペアしやすく長く使える家具とはたとえばどういうものか。無垢材を使っているものは再加工がしやすいということは言えます。加工の自由度も高いし、修理しても見映え良く仕上げられる。

あとは今申し上げた通り輸入材は高いですから。六甲山の木がもっと流通して一般的に使える習慣が定着すると良いですね」

自転車ショップSPARKによる自転車リペア講座も合わせて開催された。

自然に還る衣服?

トークゲストとして、東京からファッションデザイナーの澤柳直志さんに来ていただきました。澤柳さんたちは、会社の中で「Syncs.Earth」という「土に還る服のプロジェクト」を数年前から実践しています。

「服というのは本当にたくさんつくられていて、と同時に毎年大量の数の服が焼却されているんですよ。
石油産業の次にCO2排出量が多い業種とも言われています」

「Syncs.Earth」デザイナーの澤柳直志さん。

「そんな中、焼却処分をしないで済むような服作りがデザインの力によってできないかと思い、土に還る服のプロジェクトを立ち上げました。

今私が着ているのもそのブランドの服ですが、オーガニックコットンや和紙を原材料として使っています。 

自社管理の畑も持っていて野菜を育ててもいるのですが、その畑にこの服を埋めると、季節にもよりますがだいたい3週間ほどで分解されます。糸状菌という、畑の中にいる菌が分解してくれるからです。私たちのチームには微生物についての専門家もいます」

分解されて土に還る「Syncs.Earth」のTシャツ。

「Syncs.Earthでは『循環購入』というスタイルを採っていまして、着古したものは弊社に送り返していただくようにしているのです。リメイクしたり、使える素材は次の製品にリユースしたり。そうした再利用の段階を経て、最終的に畑に入れて服の繊維を分解し土に戻すようにしています。

畑は耕作放棄地を使って、農薬は用いない循環農法によって農作物を育てています。
ですからそこに埋めて分解するとしても、ケミカルな素材が入っていないことが重要です。私たちの服では、染料もなるべく使わないし、使うとしても天然の藍染めだけです。現在のところ、私たちの製品においてケミカルなのは品質表示タグに使われている印刷インクだけです。そこだけは予めカットしてから畑に入れるようにしています」

畑の土に入れて3週間程度でここまで服が分解される。

「土壌分解では、焼却処分のようにCO2排出はないので、環境負荷もかかりません。 

私たちは自社の製品をつくる以外に、アパレルデザインを受託する業務もしているのですがこうしたノウハウを、そうした仕事でも活かしていけたら何よりです。服が生態系から切り離された今までの時代から、徐々に状況が変化していくと良いと思っています」 

Syncs.Earthプロジェクト

ROKKONOMADのソーシャルルームでの人の賑わい。

山に親しむことは社会を変えていくことにつながる

もうおひとり、特別ゲストとして登山地図アプリ「YAMAP」を運営する(株)ヤマップ代表取締役・春山慶彦さんにも講演していただきました。春山さんがYAMAPの事業に取り組もうと思ったのは3.11、東日本大震災のときでした。山とのつながりが増え、自分たちも自然の一部であると再認識できるようになれば、エネルギーや命に対して自覚的になれるんじゃないかと考えたと言います。山に親しむ人々が増えることは社会が変わることにつながる。春山さんのお話は詳しい記事を別につくりましたので、そちらをご覧ください。

(株)ヤマップ代表取締役 春山慶彦さん。
トークに聞き入る参加者たち。

今年のHIKE&SWAPはあまり天候には恵まれませんでしたが、にもかかわらず、多くの方が足を運んでくださり、かつ、楽しみながらも意欲的に、真剣な関心を持ってプログラムに参加してくださいました。

私たちの暮らし方や働き方はこれからどう変わっていくのか。変えていかざると得ないのか。動向を敏感にキャッチし、同時に対応する術(すべ)も模索していきたい。そんな気持ちから2023年のROKKONOMADは、「循環」というキーワードを今後も継続的に掘り下げていければと考えています。

イベントにお越しくださった皆様、ありがとうございました!

西アフリカの太鼓を中心とした音楽とダンスのグループ「BACHIKONDOOO」によるライブ演奏。

(コラム執筆=安田洋平 写真撮影=加藤雄太)