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山と仕事Vol.7 長澤光希さん「世界と非同期型リモートワークでつながる働き方と、六甲山上の生産効率」

タスク管理ツール「Todoist」やコミュニケーションツール「Twist」といった世界的なアプリを開発していることで知られるDoist社に、日本から参画しているiOSソフトウェアエンジニアの長澤光希(ひろき)さん。以前はポルトガルに暮らしていましたが、日本に戻り、現在はROKKONOMADに週1回のペースで通って作業をしています。

2017年から長澤光希さんはDoist社の一員。以前はポルトガルに拠点を置いていたが、現在は神戸に暮らしつつ世界中のメンバーとリモートでやり取りしてエンジニアの仕事を続けている。

――iOSアプリをつくるエンジニアをされているということですが、スマホアプリをつくるのはいつから行っているのですか。

大学時代は理工学部の物理情報工学科にいたのですが、先輩でiOSアプリをつくっている人がいて自分でも見様見真似で簡単なアプリをつくってみたのが最初、今から10年以上前のことです。ただ、そんな初心者がつくったアプリでもちょっとした反響などもあって面白くなって本格的に興味を持ち出したのです。それで独学でプログラミングを行いながら、知り合いづたいにアプリを使ったビジネスを展開しているスタートアップの会社を教えてもらって、大学に通いながらアルバイトをさせてもらい、色々学ばせてもらって。大学卒業と共に、その会社に就職する選択肢もあったのですが、他の現場も見てみたいと思い、モバイルゲームの制作・配信を扱う大手企業に入りました。そして働くうちに、世界的に使われているアプリに携わりたいと思うようになり、徐々に海外のスタートアップからの求人がないか探すようになりました。そしてDoistと出会って、現在の働き方に至っています。

長澤さんが3年暮らしたポルトガルの都市、ポルト。 写真提供=長澤光希

――他の海外企業ではなくDoistだったのは、どうしてですか。

第一は自分も利用していて、なおかつ世界的に支持されているサービスに関わりたいという気持ちが強かったこと。もうひとつは、Doistと出会ったのは2017年のことだったのですが、当時他の海外法人は現地に来てもらう前提での求人でしたから、日本からだと外国に引っ越しさせるのは会社にとっても負担の重い話ですし、あまり積極的ではなかった。それに対してDoistは、当時からフルリモートワークを前提に働き方が設計されていたという点が大きかったです。

ヨーロッパに居る間に登頂したモンブランでの記念の一枚。 写真提供=長澤光希

もともとデンマークに住んでいた代表が個人で始めて急成長した会社なのですが、求人を行う際に現地に限定せず、リモートを前提に広く呼びかけたことで良い人材を増やすことができたという成功体験があったので、自然とそういう企業風土が確立されていたのです。ですから面接も、トライアルでプロジェクトに参加するのも、一貫してリモートでした。ただ、私自身は一度海外に住んでみたいという希望があったので、ビザを取ってもらって、ポルトガルのポルトにあるDoistのオフィスに出社する方を選ばせてもらいました。もっともそういう社風でしたから、ポルトガルに移り住んだ最初のうちは出勤していましたが、最後の方は、ポルトガルにいてもカフェなどで仕事している時間が長かったですが(笑)

「播磨富士」とも呼ばれる高御位山(たかみくらやま。加古川市と高砂市の市境)に登ったときに撮影。 写真提供=長澤光希

――日本に戻ってこられたのは2019年?

ポルトガル生活が3年になって、そのまま住み続けることもできたのですが、最終的にいったん日本に帰ることにしました。前述の通り、もともとがフルリモートですから作業をする上ではどこにいても支障はないですし。私の出身は千葉なのですが、妻の馴染みのある場所が神戸で、この機に一度住んでみたかったので神戸を選びました。

今ROKKONOMADには週1回のペースで来ているのですが、自宅からのアクセスが良いことと、六甲ケーブル下駅の脇から油コブシのルートを登ってオフィスに来られるところが気に入って入居しました。ここに通う際にケーブルカーを使ったことはこれまで一度もないですね。山が好きで週末もよく登りに行っているのですが、普段からトレーニングしていると、いざ登りに行ったときにきつくないから山を楽しむ余裕ができるのです。基本的に自分の足で来られる場所が好きです。

――日本とヨーロッパ・アメリカではタイムゾーンがかなり違うわけですが、仕事をする際にやりづらさは感じないのですか?

私たちの作業環境では「非同期型コミュニケーション」の最適化がされているんです。最初Doistに入ったばかりの頃は、質問したことがその場ですぐに返ってこず、一日経って相手の時間帯に返ってくるという時間差に違和感がありました。けれども慣れてしまうと、むしろ常に“即レス”にこだわるがゆえの急き立てられる感覚から解放されることができ、自分の作業にも集中しやすいので快適です。お互いのやりとりも熟考してから行える分、無駄が少ないと思っています。一方で、私たちの提供しているアプリケーションサービスでトラブルがあったときなど、緊急性を要するときにはすぐに連絡を取り合うという体制もできていて、使い分けが上手くされていますね。

ROKKONOMADには週に1回のペースで通い、仕事場として使っている。行き帰りは歩きで山を登り降り。

――山歩きが日常的にできることのほか、ROKKONOMADに通っていてメリットと感じる点はありますか?

Doistが提供するTodoistには、過去一年間の作業効率を振り返る機能もあるのですが、それを見るとどの曜日に一番タスクが完了できているか見られるようにもなっていて、私の場合、ROKKONOMADに来ている水曜日がもっとも生産性が高くなっているのです(笑)

基本的にずっと同じ場所で作業していると集中力が落ちると感じる性質なので自宅やカフェなど点々とするのですが、その中でここが一番効率が上がっているというわけです。

もうひとつ良いのは、違う分野の方たちに会えることですね。ずっとIT業界にいて他業種のことをほとんど知らないので、話を聞くのがすごく面白いですし、自分に貢献できることも何かあるんじゃないかという観点に立って話を聞くのでインスピレーションもかなり得られています。

2020年、ポルトガルの離島、サンミゲル島で行われたDoist社のリトリートの様子。毎回、違う国で集まり、普段リモートでやり取りしているメンバー同士、交流の機会を持つ。 写真提供=長澤光希

――Doistのメンバーは世界中にいらっしゃると思うのですが、会ったりはされないのですか?

私たちの会社には「Retreat (リトリート)」という、年に1回、会社全体のリアルな集まりの機会が設けられており、今年はどこの国のどの都市にしようと決めて、そこに世界中から集結するのです。おっしゃる通りDoistのメンバーはいろんな国にいるので開催地もワールドワイドですが、私が参加したことがあるのはチリのサンティアゴ、ギリシャのアテネ、ポルトガルの離島のサンミゲルです。

そこでは仕事の話をしたり、ゲスト講師を招いて講演を聞いたりもしますが、半分以上はレクリエーションです。みんなでスポーツしたり観光したり、普段一緒にできないことをする場。業務上はリモートワークで完結できると言いましたが、一緒に仕事をしている相手が知っている人か知らない人かで、やりやすさの違いは出てくるんですよね。またメリハリになるというか、楽しさ・モチベーションも上がります。昨年は新型コロナの関係で中止になってしまいましたが、やっぱりあると組織としての一体感も得られますし、今年は開催されると良いなと思っています。

長澤光希プロフィール
DoistのiOSアプリ開発エンジニア。個人でもiOSやmacOSアプリの開発をしている。趣味は、登山、ハイキングや生産性(プロダクティビティ)効率化など。最近は、宇宙・天文に興味がある。
Doist Official Website
Hiroki Nagasawa Website

(コラム執筆=安田洋平)