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山と仕事Vol.6 スノウロビン「辺境でこそデジタルカンパニーとしての本質を深められる」

ウェブ、アプリ、システムの開発から運営までワンストップで行うデジタルサービスの会社「株式会社スノウロビン」のCEO平山太朗さんとCBO廣岡彰文さんに話を聞きました。

平山さん(左)と廣岡さん。株式会社スノウロビンは法人会員としてROKKONOMADを活用されている。

スノウロビン社は20数名の社員と30数名のパートナー・ワーカーを擁する企業ですが、メンバーの全員がリモート。2021年5月にROKKONOMADに入居された際にこの場所を本社登記地にされました。 

――以前は東京、大阪、米国でオフィスを展開されていたとのことですが、六甲山のこの場所に集約した経緯について教えていただけますか?

弊社はデジタルサービスを提供している会社なので、そもそも「ここでなければできない」という場所の制約には縛られないんですね。というか以前から、「人が簡単に来られない」場所に拠点を置きたいと思っていました。言い換えれば、デジタルを前提にしないとつながれないような場所。そういう環境こそ、デジタルカンパニーらしいと言えるのではないかと。

晴れた日はデッキで作業。「ここに来ること自体が何よりの気持ちの切り替えになる」と廣岡さん。

――この場所がイメージに近かったのですか。

先程の話を突き詰めると究極はオフィスレスということになると思いますが、最低限、法人登記をする住所は必要となります。そんな折、神戸市の方から六甲山上スマートシティ構想と共に、こちらのことを教えてもらい、自分たちにとって理想的な場所なのではないかと考えたのです。

最初は無人島でもいいかと思ったのですが(笑)、さすがにそれだと郵便物が届きにくくて、取引先に負担をかける可能性が生じます。陸路で最低限のインフラはあることが条件でした。しかし、同時にこの場所は人里から一線を引いた距離であり、標高800数十メートル、 大阪平野を一望でき、海も見える。ただ30分あれば山を降りることができ、そこには相当な規模の商業インフラもある。なかなか、こんな環境はありそうで無いです。

「ここは私たちにとって理想的なロケーション」と語る平山さん(右)。

――どうしてそのような「オフィスのあり方」を目指したのですか。

昔は、広々としたオフィスにたくさんの社員を集めて会社を大きくしていくことが信用を生むと考えられてきましたが、もうそういうテンプレートに頼る時代ではなくなってきているのではないかと感じています。今の時代、自分たちが本当に示さなくてはいけないことは、立派なオフィスより、自分たちのつくり出すものがどれだけインパクトを持って社会に貢献できるか。その一点にこだわる姿勢を体現したいという気持ちが、こういう場所選択に向かわせたのかもしれません。

もうひとつは、東京や大阪といった大都市圏に本社を置いてしまうと、そのフレームの中でしか人を採用しなくなりがちで、そういう慣習も断ち切りたかった。現在では採用にあたって地域は一切関係なし、全世界が対象とうたっています。優秀な人は大都市部に集まるということももはや通説ではなくなってきたのではないでしょうか。

――「良いものづくり」をするためにはどういう働き方がいいのかという点を一貫して追求されている気がします。

今の時代、クリエーターやエンジニアをひとつのオフィスに押し込めていくという方法論より、いろんな場所に行き、いろんな価値観に触れることができ、プライベートも含めて充実させられる、そういう方が優れた発想力や高い専門性を高いレベルで発揮してもらえることにつながるんじゃないかと思っています。

スノウロビンでは活動する時間・環境を自分の意思で選べるワークスタイル「Anytime,Anywhere(いつでもどこでも)」を推奨している。

――御社の求人記事で、「我が社はホラクラシー型の組織です」と記載されているのを見ました。それも今おっしゃったようなことと関係していますか。

※ホラクラシー……社内に役職や階級、上司と部下の関係などが存在しない、フラットな構造の組織。責任の所在がチーム、もしくは社員個人に分散され、それぞれが裁量をもち、自主的に仕事に取り組めるようになる。

我々がうたっているのは本来のホラクラシーとは少し違うかもしれませんが、少なくとも一人前のクリエーターがいちいち管理されなければ良い仕事ができないという理屈はおかしい気がするのです。ですから、部署とか役職といったピラミッド型の組織構造を数年前になくしました。弊社の社員は、役職は持っていないですが職位は持っています。四半期ごとに自ら成績をつけてもらい、その上で面談を行い、職位を上げるか上げないかの会話をします。

スマートフォンアプリ「パ・リーグウォーク」

――スノウロビン社が手掛けているのは、主にどんなデジタルサービスですか。 

WEBアプリケーションをフロントエンドの開発からバックエンドのシステム構築まで行っています。一例を挙げるとプロ野球パ・リーグの公式アプリの受託開発があります。「パ・リーグウォーク」という、野球観戦の行為を歩数計と連動させるアプリなのですが、健康になるための動機づけをデジタルを通して作り出す試みです。ユーザーから行動データを収集させてもらって、それをクラウドに保存もしています。

――仕事の質を高めるためにはプライベートの充実も大切と言われましたがROKKONOMADに来るようになって山の楽しみなども満喫されていますか?

(平山さん)僕は実は海派なんです(笑)。週に2~3回はサーフィンに行っているのですが、関西だと春~秋は和歌山や三重へ、冬はもっぱら日本海側へ。福井県高浜の若狭湾に行くのですが、実はROKKONOMADに車で来るときの表六甲ドライブウェイをそのまま北上すると舞鶴若狭道に接続して、高浜まで行けるんですよ。ROKKONOMADに来ない日は、そのすぐ脇を通り過ぎて、そのまま波乗りに行ってます(笑) 

ROKKONOMADに来ていない日は波に乗りに行くという平山さん。冬は日本海側の若狭湾へ。 

(廣岡さん)私は通常、自宅で仕事をしているので、週に1回程度ここに来て、ホームオフィスとこの場所と2箇所の組み合わせで使っていますが、ここに来るときの行き帰りに山道を散歩するだけでも気分転換と、ちょうど良い運動にもなっています。

――他にこの場所に通っていて利点と感じられることはありますか? 

視点を変えて俯瞰的にものごとを考えるときに最高の場所ですね。日々ほとんどの時間PCのモニターに向かっているとそこで繰り広げられているのは今日とか明日とか、ほとんどが目の前の話です。だから事業の中長期的な展望をどうするかとか、経営者として俯瞰の視点に立ちたいときは、物理的に自分を別の場所に連れていかなくてはいけなくて、以前は、そのために海外に飛んでいました。そうしないと気持ちの切り替えができなかったからです。けれど今は車で30分走って山の上まで来ればそれが出来てしまうから、とても助かっています。 

あとは、こんな辺境なのに、その不便さを補って余りあるだけの、クリエイティブかつ意欲的な人と出会えるところでしょうか。今までは「会社に行く=仕事をしている」ことになっていたけど、その前提がなくなってしまうと、人は自主的・能動的に実践することが必然的に問われます。でも、ROKKONOMADに来ている人は、出社しようと思って来ているわけではなくて、積極的な気分転換だったり、中長期的にビジネスを考えている人だったり、どの人もとても能動的です。皆とても濃厚だなと、来る度に思っています。

スノウロビンWebsite

(コラム執筆=安田洋平)