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-【オンラインアンケートのお願い】- NL/ROKKO 2023関連企画・「あなたにとって“成長”とは何ですか?」

六甲山上のROKKONOMADで、オランダの社会と思想にヒントを得ながらテーマについて考える「NL/ROKKO 2023」を今年も開催します。2023年のテーマは「成長」。今年は六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 -beyondの展示のひとつとして開催することになりました。その展示作品を作成する際の参考として、「あなたにとって“成長”とは何ですか?」というアンケート調査をしています。ぜひご協力をお願いいたします!(アンケートフォームは末尾にあります。)

あなたにとって「成長」とは何ですか?

2022年の秋、ROKKONOMADでは、オランダの先進的な思考から私たちのこれからの働き方、暮らし方を模索するイベントNL/ROKKO2022を約4か月間にわたって開催した。このイベントのテーマは「私たちはなぜ働くのか?」。オランダの哲学者・活動家・事業家・リサーチャー・コンサルタントやオランダに住んでいる日本人の方々に協力を仰ぎ、循環型経済、コモンズ、フラット型組織などの状況について教えてもらった。その中でもハイライトは、『Humankind 希望の歴史』『Utopia for Realist 隷属なき道』の著者でもあるオランダの歴史家、ルトガー・ブレグマンさんへのインタビューだった。一番印象に残っているのは、「私たちの働き方」と「気候変動や環境問題(いわゆるSDGs的なこと)」に相関関係はあるのかと聞いた時の彼の回答だった。

東京神谷町のお寺・光明寺で行ったルトガー・ブレグマンさんへの対面インタビュー。

以下はインタビュー抜粋だ。


日本人の生活は働くということと密接につながっています。したがって、『働く』を見直すことが大きな社会変化のきっかけにつながるのではないか。働き方と様々な社会問題、重要な気候変動に対する是正がリンクしているのではないかという仮説を持っています。気候変動と働き方にリンクしていると思いますか?

はっきりあると言えるでしょう。仕事をするということは、お金が動く。多く仕事をするということは、もっと多くのお金や消費が動きます。つまり仕事をすればするほど気候変動に影響がある。僕は人々が仕事する量を減らせば、気候変動も少なくなるのではないかと思っています。お金を稼ぐとやっぱり大きな消費をしたくなります。だからおおいに関係があると思っています。

日本に来て、特に東京で感じたのは、みんな仕事、仕事、といって働きすぎだということです。日本の社会全体で、働き方の効率化についての大きな議論が必要だろうと感じます。政府や民間によるキャンペーンや法による強制的なルールの運用も議論されるべきです。そして仕事によってもたらされる価値とはなんなのか、もう一度考え直した方が良いでしょう。つまり『仕事の再定義』ということ。仕事とは何なのかということです。

気候変動と仕事の相関を考えた時、脱成長という議論も出てくるでしょう。そうした議論が日本の若者を中心に多く行われてきつつあることを今回の来日で深く感じとれました。日本でもそうしたラディカルなアイデアが広がっているようです。個人的には、ひとえに成長といっても『良い成長』もあると思っています。自分には小さな子どもがいますが、彼女は常に好奇心をもって日々成長しています。こうした好奇心に裏打ちされた成長は大切にしなくてはならないでしょう。僕は既存の学校システムがあまり好きではないのですが、学校での学習と子どもの成長には関連がありますよね。僕が望む成長は、好奇心に裏打ちされた自由な学びによる成長です。反面、つめこみ型の自発的ではない勉強による成長は好みません。そういう意味では学校のあり方を考え直す時期だと思っています。これに関連して言うと、我々は『成長とは』を再定義する時期にきているのではないでしょうか。


彼は即座に迷いもなく、働き方と気候変動との間に関係性は「明確にある」と回答し、その関係性を改善するためにそもそも仕事とは何なのかを社会全体で考え直すタイミングに来ているのではないかと答えた。合わせて、我々の仕事の根源的な前提になっている「成長」という概念についても再定義する必要があるのではないかと提言した。(インタビュー全文はこちらから)。

「成長とは何なのか?」これが2023年のNL/ROKKOのテーマだ。昨今、斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』という本から「脱成長」というキーワードに焦点が当たり、いろいろな議論が起きている。ブレグマン氏が言い残したこのテーマを今年は掘り下げて、私たちにとっての「成長とは」を一緒に考えていきたい。

また成長と一言にいってもさまざまな意味がある。経済(GDP)の成長とも、人としての成長とも考えられる。生物学的な意味での植物の細胞の成長、ビジネスの成長という意味もある。

植物の成長はどのようなプロセスなのだろう。

内閣府のHPには、日本の未来を構築するために、「成長と発展の持続する社会を未来の世代に引き継ぐ」と書いてあるし、国土交通省のHPには、成長が持続しゆとりが得られる社会のイメージ図として右肩上がりの図が使われている。文化庁のHPには、成熟社会における成長の源泉として文化の重要性がうたわれている。

・そもそも成長という概念はあった方が良いのだろうか?ない方が良いのだろうか?というのも、「成長についてどう思うか」と、20代前半の女性に聞いてみたら、「成長」って言葉がダサいよね。と言われたことがある。

・私たちはどんな成長を目指すべきなのだろうか?成長といっても良い成長もあれば、悪い成長もあるかもしれない。右肩上がりだけが良い成長なのか?成長したら退化して降るだけなのか?退化のプロセスは成長ではないのか?

・脱成長論のきっかけになった経済成長は今、必要な概念なのだろうか?逆に脱成長論についてどう思う?

・あなたにとって成長の定義は?居酒屋で隣に座っていた20代後半の男性2人が仕事について語りあっていたのを印象的に覚えている。「仕事が楽しいか楽しくないかは、自分にとって成長が感じられるかどうかだよね」なんて会話をしていた。

こんなことを考えていきたいのだが、これにはひとつの答えがあるというものではない。みなさんがどう思うのか、その意見を集めて、この秋に開催される六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 -beyond-において、アートプロジェクトのひとつとして展示しようというのが今回の趣旨だ。「成長とは何か」という問いに対する答えでも、単純に成長という言葉から感じることでも構わない。また、「成長」を感じたエピソードみたいなことでも思い思いにコメントを寄せていただけるとありがたい。

六甲ミーツアートで展示の機会を頂戴した。改めて森の中を歩き、これからの社会を考える場になれば。写真:伊丹豪/ロゴマーク:佐貫絢郁/アートディレクション:芝野健太(株式会社ライブアートブックス)

この秋に、六甲山の森の中にみなさんから頂いた意見やコメントをずらっと並べて展示する予定です。忌憚のない範囲でアンケートフォームにご意見をお寄せください!。(いただいたコメントは抜粋して展示に掲載させて頂くことがあります。)

アンケートフォームはこちら

展示を行う会場となるROKKONOMAD敷地内の森の中。