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「コーポレートレベルズ」インタビュー もっと仕事を楽しく行えるようにするために小さな変革を拡げていく

ROKKONOMAD 2022年秋冬のプログラムとして、「NL/ROKKO ポスト資本主義社会の働く暮らし像」というシリーズイベントを行っています。10月のゲストはオランダのオンラインメディア「コーポレートレベルズ」創業者のふたりで、トークイベントを六甲山で開催しました。本稿はイベントの後に行ったインタビューの内容です。

オランダ発、先進的な働き方を実践している世界中の企業を取材するメディア「コーポレートレベルズ」。

オランダ第4の都市、アイントホーフェンに拠点を持つオンラインメディア「コーポレートレベルズ(CORPORATE REBELS)」の共同代表であるピム・デ・モーレ(Pim de Morree)さんとヨースト・ミナー(Joost Minnaar)さんがROKKONOMADに滞在してくれた。2016年から彼らは6年にわたって進歩的な働き方を実践している世界中の企業のもとを訪れ、インタビューしては都度「バケットリスト」と呼ばれるブログに自分たちなりの分析・考察を加えて掲載している。コーポレートレベルズが掲げているミッションは終始一貫している。「make work more fun(どうしたらもっと仕事を楽しくできるか?)」だ。

――コーポレートレベルズの活動を始めたきっかけを教えてください。

ヨースト:会社を辞めたのは2016年、29歳のときだったよ。仕事自体に不満があったわけではなかったけど、超がつくようなピラミッド型の組織で上司からのトップダウンの指示にすべて従わないといけないような、ビューロクラシー(官僚主義)的体質にフラストレーションを抱えていたんだ。自由と信頼がないと感じた。僕とピムは高校生時代の同級生で、大人になってそれぞれの道に進みお互い仕事に就いていたんだけど、会って話をしたら彼もまったく同じことを感じていた。どうしたら、仕事をもっと楽しくできるんだろう。バーでお酒を飲みながらふたりでアイデアを出し合って、面白い働き方を実践しているパイオニア的な企業をひたすら訪ねる試みをしようという結論に達したんだ。そして会社を辞めた。上司はただただびっくりしていたよ(笑)

「コーポレートレベルズ」共同代表 ヨースト・ミナー

――コーポレートレベルズではヨーロッパ、アメリカからオセアニア、中国、南米まで世界中の会社のもとを訪問されていますが、直に訪ねていって話を聞くのはどうしてですか? 今の時代、リモートチャットでも話を聞くことはできますよね。

ヨースト:ある程度のことは本に書いてあったりもするけど、そういうことってマーケティング用に美しく書かれていることもあるから、リアルにその場に行って話を聞いてみないと真実はわからないと思ったんだ。それにコンセプトはオフィシャルに書いてあるとしても、我々が知りたかったのは「どうやってそれを行っているか」。実地で見聞きして方法論を吸収したかった。だから6年で世界中150 社近く訪問して話を聞いた。

ピム:僕らのブログのタイトルは「バケットリスト」という。死ぬまでに絶対にやりたいことリスト。つまり会いたい人のところに行って話を聞きたい、という直接的な動機なんだ。コーポレートレベルズでは本も出版しているけどビジネスブックというよりある意味アドベンチャーブックかもしれない。

「コーポレートレベルズ」共同代表 ピム・デ・モーレ

――最初に会いに行ったのは?

ヨースト:車で走って1時間くらいのところにあるオランダの法律事務所が最初だ。今でも先進的な事業者で僕らに素晴らしいインスピレーションを与え続けてくれている。それからアメリカ、オーストラリアなど段々と遠いところに行くようになった。金融関係、政府機関、医療機関、製造業、福祉産業……、さまざまな分野で良い出会いがあった。先進的な働き方というとIT分野を思い浮かべるかもしれないしシリコンバレーが先行していると思うかもしれないけど、聞いたこともないような組織や企業の方がユニークな取り組みをしていることを僕らは知っている。

ピム:中国の家電会社ハイアール(HAIER)はもともと8万人もの社員がいたビッグカンパニーだが、いくつもの小さな独立した会社に分割してチームコミュニケーションを再編するという取り組みを行っている。ブラジル・サンパウロに本拠地を持つ機械製造業のセムコ(SEMCO)では従来行われてきたようにボスが従業員を評価するのでなく、逆にリーダーを社員たちが評価するというシステムを導入している。オランダの訪問介護サービス会社、ビュートゾルフ(Buurtzorg)はまさしく自律分散型のモデルと言えるような企業で、中央が決定するのでなく現場の意思決定権が徹底している。などなど、ひとつひとつ自分たちが見聞きしたことをもとに、働き方を探求して記事の執筆をしている。

ROKKONOMADで行った講演会の模様。参加者たちも積極的に会話に参加した。

――コーポレートレベルズは現在、どのような収入源で運営されているのですか?

ヨースト:2021年からオンラインプラットフォームを使ったアカデミーを本格的に始めており、それが現在は中心的な収入源となっている。ただ、「バケットリスト」ブログを書くということが我々にとっての根幹作業であることは変わらない。事例を取材して書くことでアイデアは整理されてくるし、ユーザーたちと働き方についてシェアすることができるから。

ピム:我々はコンテンツカンパニーだ。役に立つ情報を集めて、価値を提供するという点で一貫している。でもハーバードビジネススクールを始め世界中のビジネススクールが興味を持ってくれてアカデミーを創設する流れとなった。

コーポレートレベルズは働き方に関する書籍も出版・販売している。現在、8か国語に翻訳されている。コーポレートレベルズのサイトから購入が可能。

――コーポレートレベルズは株式会社?それとも非営利団体?

ヨースト:株式会社だよ。今はフルタイムのコアメンバーが5人と、10〜15人の外部フリーランスでチームが構成されている。

――最近では古い労働慣習を持つ会社を買い取ってプロデュースするという事業も始めていると聞きました。

ピム:会社を買ってトランスフォームするという事業をやり始めています。直近の例だと航空工学を事業としているスペインの会社があり、事業内容はユニークだけどとても伝統的な働き方をしていた。働いている社員たちに会社の働き方を変えることに賛成かどうかを投票してもらったら93%の人々がやって欲しいと答えたので、投資家の支援を受けて我々が購入しオーナーとして改革を実行、ファイナンス的にも健全な状態にした。

先駆的な働き方をしている会社組織から導き出される「8つの進歩的傾向」。(コーポレートレベルズの書籍より)

――今回おふたりはROKKONOMADでの講演が来日の目的のひとつだったわけですが、この後のご予定はどうなっていますか?

ヨースト:日本に来るのは初めてだから、この機会を逃すまいと、以前から会って話を聞いてみたいとバケットリストに入れてあった企業に早速アポを取った。ネットプロテクションズ、サイボウズ、チームラボ、オムロンなど。東京と京都でそれぞれ数件ずつ取材をするつもりだ。本当はスパイバー株式会社、伊那食品工業、株式会社ディスコなどにも話を聞きたかったけどまだアポが取れていないから、また日本に近々来ないと行けないね(笑) 


■ コーポレートレベルズがこれまで150に及ぶ先駆的な働き方を推進している会社に話を聞いた中で導き出した、会社組織に関する8つの進歩的傾向

   これまで   これから
(1)利益追求型から目的・価値追求型への移行
(2)ヒエラルキー/ピラミッド型の組織からネットワーク/チーム型組織への移行
(3)指示型リーダーから支援型リーダーへの移行
(4)計画&統制型の組織から実験&適用型の組織への移行 
(5)ルール&統制型の組織から自由&信頼型組織への移行
(6)中央集権型の組織から分散型組織への移行
(7)秘密主義から進歩的透明主義への移行
(8)肩書重視から能力・専門性重視への移行


コーポレートレベルズ Website

(コラム執筆=安田洋平)