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NL/ROKKOを体験してきました〜トレッキングしながら「働く」について改めて想いをはせる

ROKKONOMADではこの9月から「NL/ROKKO」という、これからの働き方について考えるシリーズ・プログラムが開催されています(12/25まで4か月続く)。オランダで進むポスト資本主義的な社会の動きとそれに伴う働き方のアップデートを参考にしながら学んでいくプログラムですが、ここで重要視されているのが、「山歩き」をしながら読書をして考えるという行為です。というわけで、早速歩いてきました。

働く場所から自由になる

歩くこと=熟考することと認識し、仕事の中に歩くことを積極的に取り入れるビジネスパーソンや哲学者や芸術家は昔から少なくありません。

また六甲山上のシェアオフィスROKKONOMADが始まって1年半が経ちますが、気分を一新したり、都市でのあくせくとしたルーティンから切り離されることを目的に、週に1~2度この施設を使うという会員さんが定着し出しています。都市部から40分~1時間程度で来られることもあり、そこまでのハードルと感じていないようです。コロナ禍がきっかけとなってリモートワークが世の中に浸透し、どこでも働けるようになったことで、仕事をする場所を1か所としない人が増えてきたとも言えるでしょう。そしてこの場所に来ると、必然的に山を散歩することも身近になります。

「ウォーキング」と「シンキング」の関係性

ここで「山を歩くこと」の効能を書き出してみます。

  • ・歩くことは思考の時間である
  • ・大自然の中に身を置いているからか大局的・俯瞰的に物事を考えるようになる
  • ・冒険している気持ちになれる
  • ・地球からの恩恵を感じ、感謝し環境を守ろうという気持ちになれる
  • ・根本的・根源的なことについて考えやすい
  • ・不安が和らぎ気分が向上し、頭が明晰に働くようになる
  • ・良いアイデアやひらめきが思いつきやすい
  • ・新型コロナウィルス感染症のリスクから遠ざかれる
  • ・概してオフィスワーカーは座っている時間が大変長いが(平均して毎日10時間ほど座っているというデータもある)、そうしたアンバランスさを是正できる
  • ・血液のめぐりも良くなり血中酸素が活発に運ばれるため、脳が活性化される
  • など

肉体的な健康をもたらし、気分は向上し、頭は活性化され、生産性が上がり本質的なことを考えやすい状態になる、ということが言えるのではないかと思います。

山の中に入ると頭のスイッチが切り替わる

さて、この9月1日からNL/ROKKOというプログラムがROKKONOMADで始まりました。「六甲山上でこれからの働き方を考えるトレッキングイベント」と銘打たれていますが、「トレッキング」と「これからの働き方を考える」がどう結びつくのか、正直すぐには想像ができませんでしたが、ともあれ早速体験してみることにしました。NL/ROKKOは六甲ケーブル山上駅から出発し、周回するように山上をトレッキングしてその間に4つの読書スポットを巡り、その中に置かれたZINE(小冊子)や、働き方再考のきっかけとなるオススメの書籍を取り出してその場で読むことができるようになっています。

読書スポットの1番目に行くと、先客が。本を読んでいる女性に出会いました。早速感想を聞いてみました。「街にいて仕事している毎日は、やはり追われている感じが強いので、『なぜ自分は働いているのか』とか『もっとハッピーに働くためにはどうしたらいいのだろうか』など普段なかなか考える機会がない。こうした雑音のない場所で、普段とちょっと違った見方で捉え直してみることができるのは良いなという気がしました」

山に来ると感覚が変化するので、この機に考えてみようという気持ちにさせてくれる、とコメントしてくれました。

読書スポットの2番目は都市を見下ろすビュースポットとして随一の場所「天狗岩」です。いにしえまで歴史をさかのぼれば六甲山は修験道の修行場でした。里の人たちは岩上の修行僧を天狗のように感じたので、天狗岩といった名前をつけたとも言われますが(諸説あり。岩の形が天狗に似ているからなどという説も)、岩の上は確かに精神集中や深い思索をするのに向いています。というわけで天然のベンチと言わんばかりにその上に腰掛けひとときZINEを読みふけります。思考を巡らせながら目を上げれば眼下には人々がひしめきあう神戸の都市部が広がり、そこから距離を置いて自分の現在地を測り直すような気分になれます。ZINEに書かれている内容は思考するためのひとつのトリガー。自問するには良い環境です。

「ドーナツ経済」って?

個人的に読書内容が特に面白かったのはスポット3でした。それぞれのスポットごとに置いてあるZINEと参考書籍は違うのですが、スポット3のテーマは「ドーナツ経済」でした。オランダ・アムステルダム市は2050年までに100%のサーキュラー・エコノミーを実現すると宣言して世界的に話題になりましたが、実践するためのモデルとしてフィーチャーされたのが経済学者ケイト・ラワースの提唱する「ドーナツ経済」です。すべての上位に「地球」が存在し、その内側に「社会」が存在するべきであるという主張が根底にあり、我々の経済活動がドーナツに見立てた、不足でも過剰でもないその輪の部分に収まっているかを常にチェックしながら環境再生的な経済を目指すというものです。

また家計が生産する財、市場が生産する財、コミュニティーのために生産されるべき“コモンズ”としての財、国民のために国家が生産する財、その4つがシームレスに関係し合いながら営まれる経済のあり方について語られていました。とても独創的でありつつ納得感を覚える経済観念のアップデートで、つい夢中で読んでしまいました。

そしてトレッキングはゴール地点へ。第4の読書スポットはROKKONOMADの庭にあります。樹々に囲まれた中に置いてあるチェアの背にもたれかかりながら、のんびり読みふけるのに最適です。テーブルもあるので本を広げ、コーヒーなど飲みながら読んでも良いかも。

独りの時間を大切に沈思黙考しながら歩くのもいいですし、場合によっては2人ペアで回って、各スポットでめいめい読書しながら、合間の道中では読んだ内容について話し合ったりするのも良いかもと思いました。

自分たちの仕事のあり方は、働き方は、これからどうあるべきだろう? そんな自問自答を、街から少し距離を置いた山の上で歩きながら行ってみるのは悪い時間の過ごし方ではないでしょう。

ウォーキング・イズ・シンキング。NL/ROKKOを自分のやり方で楽しんでみてください。

今後予定されているNL/ROKKOのプログラム

その他、NL/ROKKOでは今後以下のようなプログラムが予定されています。

9月
ミートアップ(話し合う場)
9月25日(日) 2pm to 3:30pm @ROKKONOMAD

ポッドキャスト放送(9月9日頃から配信)
第0回 ゲスト:伊東勝(SHIBAURA HOUSE)
第1・2回 ゲスト:Femke Bijlsma (Kossmanndejong) 展示デザイン会社経営/Allard Roeterink トイデザイナー
第3・4回 ゲスト:Edwin Gardner (studio monnik) 歴史未来研究家
※ナビゲーター:小泉寛明(Lusie inc.) ゲストナビゲーター:平山太朗(Snowrobin)

10月
ミートアップ(話し合う場)
10月16日(日) 3pm to 4:30pm @ROKKONOMAD(予定)

ポッドキャスト放送
第5・6回 ゲスト:Joost Minnaar (Corporate Rebels) 仕事研究家
第7回 ゲスト:決定次第お知らせします。
第8回 ゲスト:決定次第お知らせします。
※ナビゲーター:小泉寛明(Lusie inc.)

11月
ミートアップ(話し合う場)
11月20日(日) 3pm to 4:30pm @ROKKONOMAD

ポッドキャスト放送
決定次第お知らせします。

12月
ミートアップ(話し合う場)
決定次第お知らせします。

ポッドキャスト放送
決定次第お知らせします。

NL/ROKKOのコンセプト/プログラムについて詳細は特設サイトをご覧ください。
NL LOCAL/ROKKO

(コラム執筆=安田洋平 撮影=藤田 育 モデル=伊東シャノン)