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「LEARN FROM NATURE PLANTS/植物 ―六甲山に生える植物を歩いて学ぶ―」イベントレポート
「LEARN FROM NATURE 」は六甲山の自然を面白く学ぶ、月1回のイベント。興味のある方であればどなたでも参加が可能!2021年6月26日に開催した記念すべき1回目のイベントでは、「植物」というテーマで六甲高山植物園の学芸員の三津山咲子さんに話を伺いました。
【参加者の感想】
文:Kayo Bryan
ROKKONOMADで学び、山道を歩いて六甲高山植物園へ
神戸市民には身近な六甲高山植物園。今回は学芸員の方が植生や生態系のこともご説明下さるとのことで、楽しみに参加しました。
まずROKKONOMADの気持ちのよいテラスで、映像を見せていただきながらレクチャーを聞き、その後で、ROKKONOMADから六甲山上にある神戸薬科大の薬用植物園、その横を通り高山植物園へ歩きました。ハイキング道沿いに自生している植物を実際に見ながらの説明は非常に分かりやすく、また近所の子どもたちがトトロの道と呼んでいる林道のルートはミニトレッキングコースという感じで楽しめました。
六甲山の気候は高山植物が育つ、いい環境
お話は、まず六甲山の成り立ちと植物園の歴史から。六甲山の谷筋にどうして植物園がつくられたのかとか、当時高山植物が世界的に人気だった、といったお話に引き込まれました。六甲山は北海道南部や東北と同じ気候帯に属し、年間平均気温は9度ほど。年間降雨量は神戸市街地の2倍の約2200mm。日本海側と太平洋側両方の混ざった気候で、植生もその影響を受けるとのことです。
世界各地の貴重な高山植物の保存育成地でもある
近年の気候変動などにより希少植物が自生地でも減少し、群生が見られなくなったため、高山植物園にわざわざ見に来られる方も少なくないそうです。高山植物園では、日本の気候では通常は育たない高山の固有種、希少種を、種から何年も、ときには何十年もかけて、冷涼な地の利を活かし大事に育てておられるとのこと。ネパール王国の国花、ヒマラヤのシャクナゲもその一つで、60年以上前にネパール探検隊より種子を譲り受け育ててこられたものです。種の保存という意味でも六甲高山植物園が貴重な存在であり、石川県の白山高山植物園、長野県の白馬五竜高山植物園と連携し、絶滅危惧種や希少種の保存・育成に取り組んでいます。高山植物の自生地と比べると温度も湿度の高い六甲山で高山植物を育てることの難しさにまつわるお話も興味深かったです。
六甲山の花崗岩が「六甲ブルー」の美しいアジサイを生む
当日は、コアジサイは終わりがけでしたが、六甲山のシンボル的な花として知られる、ブルーのアジサイが見頃で、歩きながらあちこちで楽しめました。冷涼な六甲山では夏だけでなくも休まず秋まで咲き続け、冬でも花殻※が楽しめます。花崗岩でできている六甲山は、酸性の土壌なので青系の発色を育み、そのおかげで六甲ブルーと呼ばれる一際鮮やかな青のアジサイが多く見られるのです。なおコンクリートはアルカリ性なので、建築物の近くではピンクを帯びたアジサイが見られることもあると言います。
花殻……花が咲き終わっても散らずに残っている枯れた花のこと。
幻のアジサイ、名花のササユリ、そして数々の山野草
六甲山と言えばヤマアジサイの「シチダンカ」も見ものです。江戸時代、シーボルトが植物誌に残していたものの長年見つからず、幻のアジサイと言われていました。1950年代に六甲山で発見され、今では一般にも出回っています。六甲山の植物の中でもとりわけ名花と名高いササユリは、樹木が茂って林の中が暗くなったり、イノシシに食べられたりして、近年あまり見られなくなりましたが、倒木や伐採で林床が明るくなると、眠っていた球根が芽を出しまた増えてくるそうです。実際、今回歩いたコースの中でも、環境条件が合う場所では、様々な種類の山野草が育っている様子が観察出来ました。
暮らしに馴染んだ山野草や薬草も
六甲山に生息するは山野草や薬草は古くから人々に利用されてきました。ユキノシタ、ギボウシ、タラの芽、フキなどは天ぷらや煮物に。薬草として馴染み深いのはドクダミ、センブリ、ゲンノショウコなど。トリカブトは有毒ですが、漢方薬の世界では附子(ブシ)として使われています。
山野草には目立たない小さなものが多く、注意して探さなければ見落としてしまいます。植物園を回って「あまり見るものが無かった」と言われる方も多いのだとか。林道でも園内でも、三津山さんのご説明があったからこそ気づくことが出来た植物が沢山ありました。植物園では、季節ごとにいろいろと面白そうなイベントがあるので、伺うのがますます楽しみです!