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【体験者の声】「世間といったん距離を取って、山の中で静かに暮らす」ワーク・イン・レジデンス vol. 03 加藤雄太さん

ROKKONOMAD(ロコノマド)では、創作活動をする人が2〜4週間滞在して制作に専念していただくための「ワーク・イン・レジデンス」プログラムを用意しています。山の中の静かな空間で寝起きをして、制作に集中することができるのです。煮詰まったら、山の中を散歩したり自転車に乗ったりして気分転換するのもおすすめです!

今回は、「ワーク・イン・レジデンス」プログラムのフェローシップ(滞在支援)で滞在したフォトグラファー、加藤雄太さんの六甲山での体験をご紹介します。

(記事中の写真すべて 撮影=加藤雄太)


――ROKKONOMADはどういった経緯で滞在することになったのですか?

僕自身が神戸で生まれ育ち、学生の頃にEAT LOCAL KOBE FARMERS MARKETでアルバイトをしていた経験もあるので、今回知り合いから情報を教えてもらって興味を持ったことがきっかけでした。

――今回のワークインレジデンスでは、ROKKONOMADでの生活を撮ることを目指されていたと思いますが、振り返ってみてどうでしたか?

滞在期間が偶然一緒だった、モデルで気候活動家の小野りりあんさんや、ROKKONOMADでインターンとして働いていたかずまくん、ハウスアーティストのロク・ヤンセンさん、レジデンスマネージャーのヤンセン尚子さん、しゅん君、青山さん、シャノンさんなど、とにかくROKKONOMADで知り合った人を撮ること、すごく楽しかったです。僕は普段東京で会社員をしているのですが、そのせわしない日々から距離を取って、近くの人と話すことだったり、子どもと遊ぶ、森を散歩するなど、デジタルからいったん離れて一緒に過ごす人との時間をまず何よりも大切にしたいと思っていました。ですから写真を撮るつもりではあったけど、無理矢理自分自身をプッシュして撮りたくもないのにシャッターを切るってことはしたくなかったのです。

――でも結果的には結構写真を撮っていらっしゃいましたよね?

はい。めちゃくちゃ楽しかったからです。特にケハレの三宅夫妻の畑を訪ねさせてもらったときなんかは、もう最高でした。農家さんを撮影してみたいっていう気持ちはもともと20歳くらいからずっとあって、学生時代にEAT LOCAL KOBEでアルバイトを希望していたのもそういう動機があったからでした。だからこそ、今回も農家さんと一緒に過ごす時間をいただけたことは、短いなりにすごく充実した時間でした。

――なぜ農家さんの写真を撮りたかったのでしょう。

路上で知らない人に声をかけて写真撮影とインタビューを試みるのが、僕がずっと学生時代から取り組んでいる活動です。なので正直街歩いてる人であれば皆さん、僕にとっては撮らせていただきたい存在です。ただ個人的に心躍る瞬間は、何かに真剣に取り組む人の姿を見たときです。写真を始めた頃から、いわゆる「職人」が真剣に現場で取り組む姿を追いかけたい気持ちはずっとあって。農家さんの背中は憧れでもあるし、食材を自らの手で作り、育て、食し、分け、暮らす、素敵だなぁと。

加藤雄太さんが北区で出会った男性(上の写真)に行ったインタビューより。「これあの、長いことほっとったんやけどな、採ってみたんやんか。猪に食われたあとやねん。美味いかどうか分からへんわ。初めて今年作ったからな。1本の木で8個くらいなっとったんちゃうかな。一番最初にやられたときにな、これと他の何本かもやられたんやんか。ほんでこれが生き残りやん。小芋も50本ほど埋まっとったのに、食えるやつ皆やられてもうた。ほんでや、あいつら根元だけな、根元だけ綺麗に掘って、皆食うていきよんねん。相当腹一杯になっとるはずやで。芋好っきなんやなぁ。いやー、暑いでこれしかし」

――2週間滞在してみて、総合的にはいかがでしたか?

個人的には感謝の気持ちでいっぱいになった2週間でした。土曜日にはEAT LOCAL KOBE FARMERS MARKETも訪ねたのですが、久しぶりに学生時代お世話になった方々にもお会いでき、その度に「お帰り」や「応援してるよ」と声をかけていただきました。時間が経っても迎えてくれる人が居たこと、とにかく励まされました。それに加えてROKKONOMADに滞在できた。偶然だけど、あのとき、あのメンバーが滞在していて出会えたこと、本当に良かったです。ずっとそんな気持ちでした。

――仕事や普段の生活から離れる、距離を取るというところにROKKONOMADの価値があると感じていらっしゃるのかなと、聞いていて思いました。どんな人がここに向いていると思いますか?

滞在中にも考えていたことなのですが、普段の生活と少し距離を置いて考え事をしたいっていう人にはすごく向いてるかと思います。例えば進行しているプロジェクトがあったとして、そのプロジェクトをもう少し深く見つめたいときに、世間といったん距離をとって、山の中で静かに暮らす、みたいな。

でもそういう目的意識みたいなものも全部なしで、とにかく足を運んでみてほしいなとも思いました。というのも、その場に集う人が、とにかく「素敵だなぁ!」って思える人たちばかりだったので、何かそこでの出会いに耳を傾けたり、シェアオフィスだからこそ他の人の日常を垣間見るだけでも、自分自身にとって、いいスパイスになると感じました。

――逆に困ったことや、もう少しこうであってほしかったという要望はありますか?

本当に一切浮かんでこないですね。逆に何もなくてよかったと思いました。ちょっと不便なくらいがいいなって。コンビニが近くになかったのもめっちゃよかったです。日常が非日常になったし、コンビニに行きまくってる東京での自分に対してちょっと疑問を抱いたりとか。なかったらなかったで、じゃあどうやって暮らそうかって、頭を使うし、あるものに感謝が生まれて豊かな気持ちが湧いたり。だから結局良かった話になっちゃいますけど、良かったです(笑)

加藤雄太
東京で写真家をしながら、学生時代から続けている「HAZIME-MASHITE」という道で声をかけて写真を撮る活動をしている。インスタグラムや本で撮った写真やその人の生活史を発信中。
WEB: Yuta Kato
Instagram: @_yuta_kato_  @hazime_mashite_