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【滞在者の声】「自分の暮らしを、自然のテンポに寄り添わせる1週間」仲川希良さん

ROKKONOMADにはご家族でのロングステイにもぴったりな1棟貸しのコテージが。「森の中に暮らすように滞在する」街に近い山の中にそんな滞在スタイルがあります。
2025年7月に滞在されたのは仲川希良さん。テレビ、CM等で活躍されているだけでなくアウトドアにも精通し、本格的な登山を始めて15年以上になります。そんな仲川さんが、「都市の山」である六甲山に親子で滞在しながら周辺を訪ねました。

六甲山は、歩くテンポを取り戻せる山

私は車の運転が苦手なのですが、六甲山にあるROKKONOMADまでは、ほぼ公共交通だけで行くことができます。それがまず「都市の山」の魅力のひとつです。東京からだと新幹線で「新神戸駅」まで行き、市バスを乗り継いで「六甲ケーブル下駅」まで。そこからケーブルカーで10分上がって、15分ほど歩けばROKKONOMADに着きます。実際に私も、長田区でリュックを作っている神戸ザックの工房見学など、神戸の散策を楽しんでから、公共交通機関を利用して上がって来れました。

六甲山を楽しむには自然道や森の小道をゆっくりと

初めての六甲山は、山の上にさまざまな観光スポットがあることに驚きました。それも徒歩で回れてしまうのが、とってもありがたかったです。六甲山は自然道の数メートル脇に車道があることも多く、車で巡ることも出来るんですけど、自然道を辿ればほとんどの場所に歩いて行けます。この季節は何の花が咲いてるとか、足元の土がふかふかな感じとか、あの虫がいる、この蝶が飛んでるとか、そういうことをずっと感じながら移動ができました。

小道がたくさんあって歩いて生活ができるように整っているっていう、ゆっくり過ごすのに本当にちょうどいいサイズ感。この道で辿り着けるの?と思うような小道でも、歩けばケーブル駅まで行けたりしてね。

山を歩いて見つけた鳥の羽根

普段は東京に住んでいて、と言っても割と緑の多い地域で、日常的にも自然に触れられるんですけど、それでもやっぱり、「自然のなかのテンポと自分の暮らしのテンポを同化させたい」っていう気持ちがあって、山に行くんです。

本来、生き物的には自分の足で歩けるスピードが限界だし、そのスピードの方が正しい速さだと思ってるんですよ。街なかでは周りにコントロールされている感じがありませんか。 電車も何分に来てとか、何分までに乗らなくちゃとか、街のテンポがあって、移動の速さにしても自分以外のものに決められてる気がします。山では自分の足で歩くことで自分のテンポで見て、聞いて、感じて過ごせると思うんです。雨が降ったらひと休み、暗くなったら眠る。そういう生き物的には当たり前の暮らしのテンポも、山のなかだと自然に選べるんです。

ばったり出会った脱皮中のセミ

山には、謙虚さを取り戻せる時間がある

実は、着いた翌日は大雨だったんです。私にとって山ってまだまだ出かけに行く存在だし、六甲山にいても、せっかくだから出かけなくちゃ!みたいな気持ちがあったんです。でもね、起きて目の前の景色、今囲まれているものが山なんだから、わざわざ出かけなくてよかったんですよ。 

お部屋の窓にバーッと叩きつける雨が強まったり弱まったりするのを感じて、止むと斜面を雲がグワッって上がっていく様子が見えて。ダイナミックに天気が変わる場所に、まさに今自分がいるっていうのがよく分かったし、その後に散歩した時も、完全に霧に包まれてもう見えないぐらいになっちゃったんですけど。息子と「雲のなかにいるね!」と興奮しました。

一棟貸しコテージのテラスで過ごす朝
天気も回復してきたのでお散歩に

天気をはじめ、自然の方が圧倒的に存在感が強い場所にいられるっていうのが山の良さで、自分の小ささとか、人間としての生き物の弱さとか、そういうものを山に行くといつも感じるんです。街にいるとおごってしまうというか、そこは自分にとって心地よい様に整えられた場所なんで、本当はそんな力がなかったり、大層な存在ではないのに、なんだか自分が中心に思えてしまったり、そこを中心に物事を考えちゃったりするんですけど。山に行ってみると、その辺にいる動物たちの方がよっぽど強い。

少し気を引き締めつつ家族と一緒に周辺を探索

私はレインコートを着たり、靴を履かないと歩き回れないのに、動物たちは身一つで春夏秋冬過ごせるわけじゃないですか。私は、ここの動物よりも圧倒的に弱い生き物なんだなって思うと、山に行くたびに謙虚な気持ちを取り戻せる気がしていて。そして、本格的な山に登らなくても、神戸の街の景色が見えている「都市の山」で安心した状態で、その「取り戻す体験」を得られるのは、やっぱりここならではの魅力です。

ここでは、衣食住の基本に集中できる

雨が上がって晴れた日には、天狗岩まで自然道を歩いて行ってきました。途中から背丈に迫るくらいの笹に埋もれてしまっていて、道っていうのは誰かが手入れしないと消えていくものなんだって教えてくれました。当たり前のことかも知れませんが、普段の暮らしでは、なかなか思い至らないことです。

辿り着いた天狗岩からの素晴らしい眺め!

山はそういう生活の基盤や衣食住の基本を改めて考える機会にもなりますね。普段の住環境は誰が成り立たせてくれてるかっていうことを考えるようになるし、山の上だと衣食住が整ってる場所とは全く変わるから、ちょっとした緊張感を持って自分の基本を確認するんですよね。

山では山にあるもので遊びが始まります

ROKKONOMADは水道もあるし、電気も通っている場所ではあるんだけど、衣食住の基本に集中しなきゃいけない環境っていうのはいいなって思います。家族で1週間滞在するなら、その分の食料ってどれくらいの量だろう?とか。下の街まで買い出しに行かないとすると、無駄なく買い込まなくちゃいけません。着替えも、コロコロ変わる天気に心地よく対応できるよう選ばなきゃいけない。息子も自分で荷物を背負って歩くとなると、好きなおもちゃも置いていこうとか。カジュアルに家族で考えるきっかけになりますから。もちろんアクシデントがあればすぐに下りられますが、六甲山はそういう意味でも、本当に「ちょうどいい」山でした。
今回は機会がありませんでしたが、「六甲やまくだり地図」というとっても気になるガイドマップを教えてもらいました。次に六甲山に登るときは、ぜひ、「やまくだり」にもチャレンジしてみようと思います。

(滞在期間 2025/7/16〜7/22)

都市の山、六甲山!また来ます!

今回の滞在ではのお子さんと一緒に六甲山を訪れた希良さん。家族でも安心して過ごせた1週間だったようですね。一時、都市を離れて得る体験や感覚が、心身を健やかに。雨のため有馬温泉へ下りていく計画はまたの機会にお預けになりましたが、六甲山から車で30分もかからずに行くことができ、山上バスと有馬・六甲ロープウェイを使っても行くことができる近さです。有馬だけでなく、神戸市の市街地とのアクセスの良さは、自然ゆたかな環境で子育てしつつ、仕事などで市街地へ出かける必要がある子育て世代にとっても過ごしやすさ・暮らしやすさの1つですね。希良さんたちも滞在中に車で大阪に出かけて、戻ってきたりもしたそうです。

仲川希良
MODEL・フィールドナビゲーター

モデルやCM、広告等で活躍しながらアウトドア雑誌に出演したことをきっかけに2010年より本格的に登山をスタート。日本各地の山を巡りながら自然の魅力を伝えている。著書に「わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方」「山でお泊まり手帳」
https://www.instagram.com/kiranakagawa/

(取材=東 善仁)