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シリーズ 山と仕事 Vol.1 RYOさん(デジタルプロダクト・デザイナー)
ROKKONOMADにステイしてくれた人々の様子を通して、「山と仕事」のありようについて考えていく連載。第1回は、5月半ばからおよそ1か月間、ROKKONOMADに泊まりながら仕事をしていたRYOさん。デザイナーとして働くかたわら、Instagramのストーリーズ機能を用いて自らの移動の足跡を記し続けています。
RYOさんにとってInstagramストーリーは暮らしの「破片」だと言います。20年間暮らした東京を離れ、ベルリンに降り立った2019年から日本に戻って現在までの日々を連続的な写真の流れとして綴っています。そこに今回、六甲山での暮らしの破片も加わりました。
RYOさんのInstagram ストーリー「Mt.Rokko」を見る
――ベルリンに移った2019年から今日までずっとInstagramのストーリーを続けられていて、その時その場所に暮らした証しでもあるように感じますが、アウトプットする際に気をつけていることは何ですか?
自分が住んだ場所の好きなところをいくばくかでも伝えられたら、というのが根本的な動機です。でも僕はその時、その場所にいるから音、匂い、風、温度など、そういう情報を得ているわけですが、見てくれている人は携帯の画面越しでしか触れられないわけじゃないですか。感じ取った情報を、この場面では匂いよりも気温だな、風の感じだなと、あえて切り取ることで擬似体験してもらうことにつなげられればと思いながら行っています。
――3年半働いていた会社を辞めた後にベルリンで暮らし、その後日本に戻ってきたと聞きました。現在24歳ということですが、仕事のキャリアはいつ始まっているんですか?
デザインの仕事を始めたのは16歳のときなんです。高校生でしたけどインターンとしてウェブサービスをつくっている会社に入れてもらって、学校が終わると出社して働かせてもらっていました。
それからウォンテッドリーという会社に18歳で入り、そこでデザイナーとして3年半働きました。会社を辞めてベルリンに行ったのが21歳のときです。
――移動しながら暮らすようになったのはどうして?
自分のいたIT業界ではデータを事細かに検証したり、ユーザーテストを徹底して行い、もちろんそうした分析にも有効性があるのですが、ただそれでわかった気になっている側面もあるんじゃないかと自問するようになりました。それで、多様な人の生活をもっと直接に知りたくなったのです。
ずっと東京にいるとそれが日本人のスタンダードな暮らしであるかのように思ってしまいますが、実際には、いろんな地域に行くと、その土地ごとに異なる普通の生活というものがある。身を持ってそれを感じることでデザインにすぐに活かせるかはわかりませんがモノをつくる際に具体的な人の顔が浮かんでくるんじゃないかと思うし、そういうことが大事。だから、いろんな場所に行き、実際に暮らしてみたい。
――デザインはいわゆる大学・専門学校などで教わったりということはなかったのですか?
学校で専門的な教育は受けたことはないし完全な独学です。でもネットもありますし、わからないことが出てきたらその都度調べながらやってみればいいと思っています。まず実践してみて、そこから次にどうすればいいか考えていく気質です。
――今みたいに移動しながら暮らす間も普段の業務はしているんですか?
ものすごくしていますよ(笑)どの場所からでも納品もするし、関わっているプロジェクトのミーティングにも参加しています。どこにいても仕事の仕方が変わることはありません。普段はウェブやアプリ、IoT(※)に絡むアプリのUI/UXをデザインする仕事をしていて、今は病院のカルテを生成するアプリのUIデザインを六甲山の上からしているところです。
※IoT(アイ・オー・ティー)……Internet of Thingsの略称。従来インターネットに接続されていなかったモノとも通信を可能にして情報のやり取りができるようにして、そこから新たなサービスに結びつける取り組み。
※UI/UX……UIはユーザー・インターフェイス。操作性や視認性などを使いやすくするためのデザイン/設計のことを指す。UXはユーザー・エクスペリエンス。ユーザーが製品やサービスを通して得られる体験や経験のこと。
――東京、ベルリン、北海道美瑛町(びえいちょう)、湘南などに住んでこられて、今回が六甲山。この後はどこに行かれるのですか?
大阪、広島、熊本と移動し、いったん東京に1週間程戻って、その後屋久島へ向かう予定です。
いろんなところに第2の故郷や、行きつけの店が出来るといい。また今回六甲山上で行った写真展は僕としても初めての試みでしたが、今後、そのときそのときで自分が住んだ土地で展示ができたらと思っています。
今回の展示の際も東京から六甲山まで観に来てくれた友達がいたのですが、そのとき僕が住んだところへ、違う土地に暮らす友人が訪れてくれて、結果的にその友人たちも新しい生活を発見するきっかけにもなったら嬉しいです。Instagramのストーリーを通じて僕が今どこで何しているか、ということも皆常に察知してくれていますしね(笑)。
RYO USAMI
UIデザイナー / デジタルプロダクトデザイナー / フォトグラファー。2015年から2018年まで Wantedly, Inc. でメインデザイナーを務めるかたわら、フリーランスとしてもスタートアップを中心にプロダクトデザインを手がける。2019年ドイツ・ベルリンに移住。2020年3月より日本に一時帰国。東京押上、湘南、北海道美瑛町、神戸六甲山などで暮らす。
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(コラム執筆=安田洋平)