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【体験者の声】「ありたい暮らし、ありたい私。見つめ直せた1週間」ワーク・イン・レジデンス vol. 07 七緒さん

ROKKONOMAD(ロコノマド)では、創作活動をする人が滞在して制作に専念していただくための「ワーク・イン・レジデンス」プログラムを用意しています。山の中の静かな空間で寝起きをして、制作に集中することができるのです。煮詰まったら、山の中を散歩したり自転車に乗ったりして気分転換するのもおすすめです!

今回は、普段は東京・清澄白河を拠点に撮影や執筆の仕事をしている七緒さんの滞在記をお送りします。もともと神戸ご出身の七緒さん。神戸で何か活動ができれば……と思いながらその糸口を見つけることを模索していました。その矢先、ROKKONOMADのプログラムと出会い応募しました。

写真・文=七緒

東京から神戸へ、自身を見つめ直すため

昨年の秋、久しぶりの帰省の帰り道。空港デッキから六甲山を眺めながら思った。「やっぱり神戸に関わりたい」。神戸R不動産のウェブサイトをスクロールしていたら、ふと目に留まったROKKONOMADの文字。

こんにちは、写真と文の七緒と申します。東京を拠点に、写真と文にまつわるあれこれを仕事にしています。広告を撮ったり、ギャラリーで写真展をしたり、雑誌やWEBでインタビューをしたり。

東京は刺激的です。分刻みのタレント撮影、徒歩圏にそろうおしゃれなコーヒースタンド。でも30歳を越えた頃でしょうか。もう少し自然に近い場所で暮らしたいという想いが強くなっていきました。

きっかけは生まれ育った神戸。季節によって山の色が変わること、用水路がとびきり冷たいこと、茅葺屋根の家があること。豊かな自然を当たり前のように享受しながら過ごした幼少期は、原体験として私の中に根付いていたようです。

「何ができるかわからないけれど、まずは行ってみよう」なかば勢いで訪れたROKKONOMAD。ここで過ごした1週間は、ありたい自分を再発見できた日々でした。

自然と文化のバランスが、ちょうどいい

滞在を振り返るとき、一番に思い出すのが朝の情景です。

目覚めたら山の散歩へ出かけ、澄みわたった空気を体いっぱいに受け止める。窓の外に広がる海を眺めながら、朝ごはんを作る。ハウスアーティストのヤンセン一家とたわいもないおしゃべり。コーヒーを淹れてワークスペースで仕事スタート。

そんな毎日。は〜〜、今すぐ戻りたい。

たとえば、電気もガスもない山小屋で「一人で自給自足してください」と言われたとて、楽しめる自信はありません。サバイバルスキルを持ち合わせていないし、ストイックに自然だけに囲まれる生活をしたいわけでもない。

山荘の面影を残しながらリノベーションされた建物、書棚にずらっと並ぶ写真集、人々の気持ち良いコミュニケーション。

自然に加えて、文化的な香りがそこかしこにある。そのバランスがちょうどいい塩梅で、私が目指したい日常がROKKONOMADにはありました。

また、ノイズがないことも印象的でした。サイレンや工事音に思考が遮られることが多く、普段はイヤフォンが手放せません。でもここで聞こえるのは風の音、鳥のさえずり、船の汽笛。耳をふさぐ必要なし!

ノイズから身を守る必要がない、というのはなんと安心できることでしょう。ぎゅっと縮こまっていた五感が日に日にひらいていきました。

結局、やりたいことは同じだった

心地よい場所で、心おもむくまま過ごせるとしたら。みなさんは何をしますか?仕事?趣味?勉強?それとも?

滞在前「自然も多いし、山の写真を撮りたくなるかな」なんて思っていましたが、結果的に私は出会った方の人生をひたすら聞かせてもらっていました。

夕飯後、ロクさんのクリエイションを質問攻めしてアトリエを見せてもらったこと。管理人・尚子さんのこれまでの道のりを夜な夜な聞かせてもらったこと。ROKKONOMADのランチを作るみきちゃんや農家のみーちゃんにもあれこれと。

陶芸家・十場あすかさんのお話を聞きに行ったのもとびきりの時間でした。山あいの町を奥へ奥へ入っていくとたどり着くアトリエ。この地で子を育てながら、作陶にはげむあすかさんの生きざま。

なぜ今の仕事をしているか、これからどう生きたいか。誰にだって、一筋縄ではいかない時があって、それでもそれでもと足を前に踏み出す。奥にひそむ生き方にふれることが心底好き。内なる想いにふれたとき、前に進む勇気をもらえるから。

だから私は、話を聞く。届けるために文を書く、写真を撮る。東京にいても、神戸にいても、やりたいことは同じだ、と気づけたことも大きなギフトでした。

「神戸に携わりたい」と意気込んで来た私。その気持ちは今も変わりませんが、いい意味で気負いやこだわりみたいなものが消えていきました。

都市と自然、東京と神戸、それぞれにいいところがある。どちらに偏ることなく、その時その時でゆらゆら行き来しよう。そしてどこにいたって人が生きる姿を写真と文で届けよう。

出会ったみなさんに心から感謝を。そして、出会った縁は、これからも、きっと。

(ワーク・イン・レジデンス滞在期間 2023/2/6〜2/11)

七緒|写真と文
1987年神戸市生まれ。雑誌編集者を経て2017年に独立。広告、雑誌、WEBなど媒体問わず、撮影・執筆を手がけています。作品制作にも力を入れており、2022年に渋谷PARCOで展覧会を開催。著書3冊。

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