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六甲山上NEIGHBORHOODガイド<1> 「リネスト A HOLIDAY HOME」

ROKKONOMADのご近所さんを紹介する記事を始めることにする。最初に紹介するのは「リネスト A HOLIDAY HOME」。もう数年前から六甲山で居心地よい過ごし方を体現している宿泊施設だ。

六甲山上「丁字ケ辻」交差点から車で1分のところにあるコテージ型の宿泊施設「リネスト」。

家族単位や友達同士で借りられる、すぐ近くの“別荘”

「リネスト A HOLIDAY HOME」がある場所は以前、オーベルジュ(郊外や自然に囲まれた場所で営まれる宿泊機能も兼ね備えたレストラン)として運営されていた。ログハウスのレストランを中心に、その周りに宿泊棟が囲んでいた。 

この景色の良さはぜひ現地に来て体験してほしい。

シンガポール人のテン・ジン・ユさんがこの場所を購入しオーナーとなってからは、貸別荘型の宿泊として運営されている。宿として運用しているのが4棟、その他1棟をイベントスペースとして貸し出している。ちょうど今の時期(3月)は、卒業旅行用途で学生のグループが泊まっていたり、子どもの幼稚園・保育園の卒園にあわせ仲のいい家族同士が借りたり、家族とその親世帯の二世代で借りられたりというニーズが多い。土日はもはや空きがないという。 

以前、レストランとして使用されていたログハウス。現在はイベントスペースとして活用。

その他には宿泊しながらログハウスで写真撮影が行われるケースや、静かで集中もできるこの環境を生かして、音楽などの音撮りに使われることなどもある。またヨガを愛好するグループで集まって宿泊しながら、そこに先生をを招いてヨガを教わるといった、サークル活動的な使われ方もしている。

コテージそれぞれに至上の居心地のリビングが備わっている。

コロナ禍に見舞われる前まではインバウンドが好調で外国人のグループ予約が少なくなかったが、今は国内客に集中。関西圏を中心として、近い距離の人達がお籠もりを楽しむ「マイクロツーリズム」の実践となっている。

寝室の窓からも自然の緑が見える。

キッチンもリビングもバスルームも、それから薪ストーブといった山上の醍醐味的な暖房設備も、「家」としての機能は十二分に充実しているから食材は自分たちで調達し、ポカポカと温かい室内でごはんをつくってゆったり過ごす場所としては申し分ない。バーベキューグリルなどもレンタルできる。

新型コロナウィルス感染拡大を防ぐために求められる街なか飲食店での会食制限とは対照的に、家族単位でご飯を食べたり居心地の良い室内で時間制限も気にせずくつろげるシチュエーションとしては最高だ。外に出れば良い空気と大自然だし、常日頃のように周囲に気を遣って、子どもたちに「騒がない!静かにね」と口やかましく言う必要もない。山上ゆえのストレスフリーな環境を堪能できる。

調理器具や食器が揃うキッチン。
(左)リビングはゆったりとした天高も魅力 (右)バスルームと洗面台。

投資的なポテンシャル+生活価値

オーナーのテン・ジン・ユさんは10年近く前に来日して北海道、軽井沢、箱根、福岡など、さまざまな場所を候補として見て回ったが最終的に六甲山の物件に投資することを決めた。非日常的な価値をこれほど街と近い距離で得られる点にポテンシャルを感じたのは言うまでもないが、同時に、自分も当事者として、小さな子どももいて、子育てしながら住みたい環境だったからだ。六甲山上は郵便局や子どもの幼稚園・小学校もあって生活圏としての性格も備えている。気温も街よりは涼しいけれど5度くらいの差で寒すぎもしない。

イベントスペースとして使用されているログハウスの室内。

昨年からはウィズコロナ時代のワークスタイルの変化を意識して、働く場所としての六甲の可能性も追求するべく六甲ケーブル山上駅の近くにある3階建ての元保養所だった建物も購入。コ・ワーキングのスペースとして現在改修を行っている最中だ。あと1、2か月のうちには稼働開始できる見込みという。

イベントスペース。薪ストーブの遠赤外線ならではの温かさが気持ちいい。BBQができるデッキにもキッチン設備がついている。

“山上のリゾート”という肩書で長く歴史を紡いできた六甲山上だが、マイクロツーリズムや、オフィス分散化時代のサテライトオフィス空間として、場所の使い方イメージが少しずつ刷新され始めている。これからも徐々に多様化した山上の使われ方の事例が増えていくだろう。

リネスト A HOLIDAY HOME 

(コラム執筆=安田洋平 写真=藤田 育)