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アーティスト、ミロン・シュミュッケルさんが歩いた六甲山。思い起こしたのは、故郷トランシルバニアの「ホームマウンテン」
2025年、秋の六甲山にベルリンを拠点に活動するアーティスト、ミロン・シュミュッケルさんが滞在しました。ミロンさんのドローイングは植物や花などの自然にインスピレーションを受けて描かれた作品でありながら、何かモチーフがあるのではなく完全にミロンさんの想像力から生み出された架空の「自然」。ミロンさんはそれを「ファンタジー」と呼びます。しかし、ミロンさんの「ファンタジー」からは、まるで脈動が聞こえてくるかのような、強く美しい生命力を感じます。ミロンさんの目に六甲山の自然はどのように映ったのでしょうか?

――神戸と六甲山に滞在した理由を教えてください。
日本の美術、文化、そして自然への関心から、アーティスト・イン・レジデンス・プログラム「AiRK」に応募しました。神戸は、都市と自然、そして文化的な場所への距離がとても近い。制作に集中しながら、日常の延長として自然に触れられる点に魅力を感じました。

――滞在と制作の環境はいかがでしたか。
AiRK神戸では、2025年10月から11月の滞在期間中、CAPのスタジオとローズガーデンギャラリーでの展示の機会がありました。制作の場と発表の場が同じ都市の中にあることは、作品にとっても、作家にとっても非常に理想的な環境だと思います。展示した作品の一部は、神戸での滞在中に完成しました。


――六甲山での体験について教えてください。
神戸に到着して間もなく、北野からアクセスできる山や六甲山を歩き始めました。特別な準備が必要なわけではなく、思い立ったときに山に入れる。その距離感がとても心地よかったです。山を歩きながら、土地の植物や空気、時間の流れを身体で感じていきました。


――六甲山が創作に与えた影響とは。
私はルーマニア・トランシルヴァニア地方の山岳地帯で育ち、子どもの頃から身近に山がある生活を送っていました。家の近くの山を「ホームマウンテン」と呼んでいたのですが、六甲山を歩いたとき、同じ感覚を覚えました。双眼鏡と植物や鳥、昆虫の図鑑を携え、日本の植物を実際に観察できたことは、私の創作に影響を与えています。


――六甲山の自然をどのように感じましたか。
六甲山の植物の多様性には驚かされました。晩夏から秋へと移ろう森の時間を、日々の生活の中で見届けることができた。帰国の頃には紅葉が最盛期を迎えていて、その変化を「通過点」ではなく「生活の一部」として体験できたことが、強く印象に残っています。
――他の山と比べて、六甲山の特徴は何でしょう。
六甲山は、決して険しい山ではありません。その分、足元の植物や小さな生き物、光の変化といった細部に自然と目が向きます。都市のすぐそばにありながら、自然との向き合い方を静かに深めてくれる山だと感じました。


――また神戸や六甲山を訪れるとしたら。
ぜひまた六甲山に戻りたいです。藤やモクレン、ツツジが咲き、昆虫や鳥の気配が増す初夏の六甲山を歩いてみたい。その体験は、日本の古い絵画や浮世絵を読み解く感覚とも、きっとつながってくるはずです。そして何より、神戸で出会った人たちに、また会いたいですね。
ミロン・シュミュッケル
アーティスト
ルーマニア生まれ。キールのムテジウス芸術大学にてヨリス・ホーフナゲル(1542–1600)の細密画研究で博士号を取得し、絵画や写真で自然を再構築する作品を国内外で発表。現在はベルリン拠点。2025年に神戸に滞在し北野ローズガーデンにて谷正輝と2人展を開催した。
Miron Schmückle
Instagram : Miron Schmückle
(取材=東 善仁)
